キャスリン・マコーリフ『心を操る寄生生物』で自分も操られていることを認めざるを得なくなる

トキソプラズマという単細胞生物は、最終的にネコに寄生して繁殖するのですが、トキソプラズマに寄生されたネズミは、ネコの尿の臭いに集まるという実験結果があります。宿主であるネズミごと食べられることで、ネコの体内に侵入しようという戦略です。そして、トキソプラズマは人間にも寄生し、トキソプラズマに寄生された人間もまた、ネコの尿を良い臭いだと感じるようになるという実験結果があるのです。トキソプラズマはどうやってネズミや人間の臭いの好みを操っているのでしょうか?

キャスリン・マコーリフ『心を操る寄生生物:感情から文化・社会まで』は、そのような研究の数々を列挙し、私たちが自由意志だと信じているものに疑問を投げかける本です。

『 心を操る寄生生物』
キャスリン・マコーリフ

【出版】 2017-04【頁数】 323
あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? あっと驚く、巧妙なからくりを明かす! amazon.com ベストブック!
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ちょっと前に流行した腸内フローラについても言及しています。私たちの腸内細菌は人によって種類やバランスが千差万別で、それが体質に大きな影響を与えているというあれも、寄生生物の範疇なわけです。腸内に限らず、人間の体には微生物がびっしりと寄生しているわけですから、我々の人格に影響を与えている可能性は大きい気がしてきます。

また、害をもたらす寄生生物を避けるためにプログラミングされた行動も、ある意味で人間が操られた結果だとして様々な研究が紹介されています。たとえば、感染症をイメージさせる写真を立て続けに見せられた人間は、移民に対する寛容さを問うアンケートで、移民排斥すべしと回答する傾向が高くなるといった実験結果です。

寄生生物の影響に限らず、私たちの自由意志って、たぶん全然自由じゃないんでしょうね。

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