握手会でファンからナイフで切りつけられ、アイドルどころか女の子であることが怖くなってスカートをはかなくなった女子高生が主人公の少女漫画『さよならミニスカート』がすごいです。
「このまんがに、無関心な女子はいても、無関係な女子はいない。」というキャッチコピーと共に2018年『りぼん』で連載が始まってすぐに話題になりました。猛烈におもしろくて考えさせられて、私も2巻まで夢中で読みました。ところが、連載1年足らずで、作者の牧野あおい先生の体調不良により休載に。テーマがテーマだけに、作者が身を削る思いで描いていらっしゃったからだろうなと、ほぼ諦めていたのですが、3巻が出ているのを発見!5年の休載を経て、今年度から隔月で連載を再開していたのです。正直、長期休載によるパワーダウンは否めないだろうなと思いつつ3巻を読んでみたら、むしろ切れ味が増しまくっていました。
この少女漫画は、“性的魅力を売りにする”ことの意味と、徹底的に向き合う作品です。人気に陰りが出てきたアイドルグループが露出多めのグラビア仕事に手を出すのは、事務所の戦略として“性的魅力を売り”にさせられているのでは?アイドル本人の意思は?それで人気が出るなら本人も納得しているのでは?本人の納得って?
そして、同じような構造が、高校の教室など、われわれの日常にもたくさんあることが描かれます。性的魅力の高さを大きな要因として男子に人気のある女子は、そんな自分の“売り”を生かすことに、どれくらい自覚的なのか?それを戦略的に活用してしまったら、その代償を払わされたようにも見える悲劇に見舞われた場合、それは自業自得なのか?もちろん、そんなわけないのだけれど、そんな悲劇の中で、何より自分自身が自分を責めてしまう構造の避けがたさ。
『さよならミニスカート』の連載が始まった2018年は、TikTokが日本で一気に流行り始めた年でもあります。“性的魅力を売りにする”ことのハードルは、TikTokの流行で猛烈に下がったように感じています。セクシーな動画がてっとり早くバズりやすいのは、間違いないからです。だから、少なくとも判断能力が未発達な若年層には、“性的魅力を売りにする”ことのリスクを啓蒙するべしというのは、教科書的な解答の一つかと思います。ただ、それぞれ自分の手札で必死に勝負している中で、その手札を使うなというのは理不尽だという悲鳴も、当然聞こえてくるわけです。本当に難しい問題です。
『さよならミニスカート』にはミステリー要素もあり、握手会で切りつけてきた犯人は捕まっておらず、正体も明かされていません。犯人の正体もさることながら、“性的魅力を売りにする”ことの意味を、主人公が自分の中でどのように整理するのかも、猛烈に気になります。これが『りぼん』に連載されているって、すごい時代です。平成の終わりに始まった、令和の少女漫画の未来を切り拓く作品だと思います。
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