「最近、四次元が少しだけ見えてきた気がするんだよね。」という同級生の高校時代の言葉をよく覚えています。彼は当時、灘高よりも西で唯一数学オリンピック日本代表合宿メンバーに選ばれた男でした。宇宙の成り立ちについて自分なりに一生懸命考えていた私も、その感覚がちょっとだけ分かる気がしていました。
エドウィン・アボット・アボット 著,竹内薫 訳
講談社
【出版】2017.5
【頁数】163p
書籍情報は、国立国会図書館サーチのAPI(書影データ提供機関:出版情報登録センター)に由来します。
エドウィン・アボット・アボット『フラットランド たくさんの次元のものがたり』は、あの頃の感性を呼び起こしてくれる素晴らしい本でした。厚くない上に寓話の体裁をとっているので大変読みやすく、次元についての感覚を拡張したい人は是非読むべき本です。
二次元世界フラットランドの住人である“正方形”の日常や、“正方形”が、零次元世界の住人である“点”や一次元世界の住人“直線”さらには三次元世界の住人“球”と出会った際の驚きを通して、次元が増えたり減ったりすることによる世界の認識の仕方の違いを直感的に分かるようにしてくれている本です。
原書は1884年のイギリスで出版されたものの、あまり評価されず、アインシュタインの相対性理論発表後に再評価され、SF好きの方にはそれなりに知られていた作品のようです。2017年5月に講談社選書メチエで日本語新訳版が出たのを機に私は読みました。すばらしい翻訳だと思います。
読んでいて痛感したのが、三次元世界の我々が、いかに視覚に頼って世界を認識しているかということです。一次元世界では聴覚がきわめて重要な役割を果たすという描写があり、その思ってもみない世界観は、自分の世界の認知の仕方の偏りを思い知らせてくれます。四次元世界の認識を深めるにあたって、我々の視覚偏重の感覚が足を引っ張っているんだろうなと思ってみたり。
それにしても、130年前に書かれたのが信じられないというか、むしろ未来人が書いたかのような本で、人類の想像力の凄まじさに圧倒されます。私の読むための所要時間は2時間15分でした。かなり手軽に読める本です。少しでも興味のある方はぜひ!
この記事の書影は、国立国会図書館サーチの書影APIデータ(データ提供機関: 出版情報登録センター)に由来します。
コメント